文化人類学研究室では、世界の多様な社会と文化、思想をフィールドワークと民族誌、資史料にもとづいて精緻に理解するとともに、人類史的な比較の視点から、人間の本質の解明をめざしています。

 もとより、文化人類学の研究対象と理論的射程はきわめて幅広く、個別の民族文化を精緻に記述する民族誌学から、比較をつうじて人間とは何か、動物のひとつの種でもあるヒトとは何か、社会とは何か、といった諸問題を考察する理論人類学まで、さまざまな分野が含まれます。これに加えて、当研究室では開設当時から日本研究を重視してきています。文化人類学と日本思想史が有機的に連携した調査研究と教育がおこなわれている研究室はわが国では珍しく、これが当研究室の特色のひとつとなってきました。

 現在の教員スタッフは、文化人類学を専門とする者が2名、日本思想史を専門とする者が2名ですが、いずれも比較の視点を念頭におきつつ、個別研究に特化しがちな人文系諸学問の学際性を高め、従来の専門の枠にあてはまらない、独創的な先端研究の推進をはかっています。もちろん、自由で先端的な研究を展開するためには、基礎となるディシプリンがしっかりとしていなければなりません。そのため、当研究室では、フィールドワーク、実地調査、現場での研究による一次資料の収集と分析を方法として重視しており、修士課程ではその手法を学ぶためのカリキュラムが用意されています。そのうえで、思弁的な研究にとどまるのではなく、あくまでも労働し、遊び、ときとして戦い、踊り、歌い、祈り、そして思惟する、そのような現実的な人間の全体像の理解を踏まえた研究をめざしています。思想史研究の分野では文献調査とその解読が重要ですが、自らフィールドを歩き、五感を使って体得した情報も同じく重視しています。

 また、人文学は人間と社会、文化にもっとも精通している学問分野のはずであり、実社会から乖離していては本末転倒との考えから、社会連携や社会貢献にも積極的に取り組んできています。こうした方針とも関連して、本研究室は現役の大学や高等学校、専門学校等の教員、公務員、NGO関係者などを含む社会人学生を、他の諸専門に先んじて積極的に受け入れてきました。多彩な顔ぶれの大学院生による自由闊達な議論も、本研究室の特色のひとつといえます。
 学問は誰でも、いつでも、どこからでも始められるという基本理念のもと、教員、大学院生ともに日々、研鑽を重ねています。