第34回日本生理心理学会大会

プログラム

第34回日本生理心理学会大会について

 第34回日本生理心理学会のテーマは"Back to the basics"です。最近、科学に有用性や応用可能性が強く求められるようになってきました。もちろんそれは重要なことですが、短期的な利益や社会貢献のみがあまりに強調された結果、学理の根がやせ細ってしまうことが懸念されます。研究知見を社会において真に有用なものとするためには、現象の原理を解明する基礎研究の発展が必須であることは言うまでもないことでしょう。生理心理学においては、これまで営々と蓄積されてきた研究知見の体系を財産として継承しつつ、認知科学、神経科学、生命科学、計算科学などの隣接研究分野と接合可能な基礎科学としての展開が求められていると思います。そこで今大会では、基礎研究への回帰、生理心理学の基盤への回帰、を念頭に、さまざまな企画を設けています。
 特別講演は、線虫(C. elegans)を用いた分子神経生物学の研究で著名な森郁恵先生にお願いしました。行動(個体)、ニューロン(細胞)、遺伝子(分子)という3つの階層レベルを統合して記憶や学習の機構を解明する、まさにエレガントで壮大な研究をご紹介いただけるものと思います。また教育講演として、田邊宏樹先生に神経画像研究の最新動向についてお話いただきます。神経画像研究は脳マッピングから神経ネットワークの解析への過渡期にありますが、その詳細、生理心理学への示唆などについてわかりやすく解説していただきます。
 シンポジウムは「島皮質の多様な機能」と「学習と条件づけの生理心理学」の2つを企画しました。島は脳の覚醒ネットワークのハブ領域として知られていますが、知覚、運動、認知、感情、言語、など多くの心的現象に深く関連しています。このシンポジウムでは、ヒト、ラット、サルを対象とし、行動、神経画像、電気生理学的技法、神経薬理学的技法など多様な研究手法を用いた研究の知見を紹介して島の機能に迫ります。一方、学習と条件づけは心理学の根本原理であり、これまでに膨大な研究知見が蓄積されていますが、今なお新たな検討が進められています。またその成果は、神経科学や計算科学にも貢献しています。今回のシンポジウムでは、生理心理学の立場から学習と条件づけの問題に取り組む研究を紹介します。
 今大会の新たな試みとして、優れた若手研究者の研究を紹介する「ライジングスター・セッション」を、大会期間中2日にわたって設けました。このセッションは、企画、講演者の選定、セッションの運営なども若手研究者達に任せています。我が国の生理心理学の、新しい担い手を発掘し、研究を盛り上げる契機になれば幸いです。
 名古屋は全国から交通の便も良く、会場の名古屋大学東山キャンパスは地下鉄の駅から直接アクセスできる至便な地にあります。ぜひ、多くの方に大会にご参加いただき、研究の議論を交わし旧交を温めていただけますよう、願っております。

第34回日本生理心理学会大会準備委員会
委員長 大平英樹

2016年5月14日(土):大会第1日

ポスター発表1(P1)

09:30〜11:00 シンポジオン会議室

こちらから,発表番号・タイトル・発表者をご覧ください。

ライジングスター・セッション1

11:00〜12:00 豊田講堂ホール

企画 木村元洋(産業技術総合研究所)・木村健太(産業技術総合研究所)

司会 木村元洋(産業技術総合研究所)

講演者

・森 数馬(大阪大学)
  安静時の生理覚醒には本当に利益がないのか

・杉本史恵(産業技術総合研究所)
  無関連プローブ法を用いた資源配分量の評価-体性感覚刺激を使って目指すこと-

・白 宇(名古屋大学)
  「連合」という言葉でエラー関連電位を語ってみる

・岸 靖亮(近畿大学豊岡短期大学) 
  色々なものを守ってくれる欺き

・大杉朱美(兵庫県警科学捜査研究所)
  「ウソ発見」を科学する-情報検出型ポリグラフ検査の原理を探る-

シンポジウム1「島皮質の多様な機能」

13:10〜15:10 豊田講堂ホール

司会 大平英樹(名古屋大学)

講演者

・寺澤悠理(慶応義塾大学)
  感情経験の神経基盤としての島皮質

・小谷泰則(東京工業大学)
  fMRIと事象関連電位から見た右前部島皮質の時間的活動

・石田裕昭(東京都医学総合研究所)
  社会的文脈における島皮質の感覚・情動統合機能

・溝口博之(名古屋大学)
  薬物依存における意思決定と島皮質機能障害

特別講演

15:20〜16:50 豊田講堂ホール

 森 郁恵(名古屋大学)
   線虫行動と神経回路の包括的解析から記憶・学習・意思決定のメカニズムを探る

2016年5月15日(日):大会第2日

ポスター発表2(P2)

09:30〜11:00 シンポジオン会議室

こちらから,発表番号・タイトル・発表者をご覧ください。

ライジングスター・セッション2

11:00〜12:00 豊田講堂ホール

企画 木村元洋(産業技術総合研究所)・木村健太(産業技術総合研究所)

司会 木村健太(産業技術総合研究所)

講演者

・奥村安寿子(国立精神神経医療研究センター)
  文字単語処理と視覚的注意:初期視覚過程における相互作用的関係

・新倉 怜(広島大学)
  新生仔期NMDA受容体遮断ラットの時間認知

・守谷大樹(国際電気通信基礎技術研究所)
  機械学習法を利用した情動の心理生理研究

・山川香織(東海学園大学)
  急性ストレスの遅延効果-意思決定への影響-

・栗林龍馬(広島大学)
  ハイレゾ音源はなぜ良いのか?

教育講演

13:10〜14:10 豊田講堂ホール

 田邊宏樹(名古屋大学)
 ヒト脳機能イメージング研究の新たな潮流

シンポジウム2「学習と条件づけの生理心理学」

14:15〜16:00 豊田講堂ホール

司会 大平英樹(名古屋大学)

講演者

・領家梨恵(東北大学)
  強いストレス経験がその後の恐怖条件づけを増強させる生理学的基盤

・沼田恵太郎(大阪大学)
  条件反応にみる知・情・意

・片平健太郎(名古屋大学)
  条件づけ課題における不快事象回避の行動特性と生理活動の関係の検討
  - 計算論モデル・研究領域基準 (RDoC) を通した精神医学への貢献に向けて -